少子化が進む日本ですが、だからこそわが子に対してお金をかけたいというニーズが増えています。
習い事や学習塾は、小学校に入ってからではなく、乳児、幼児のころから行わせ、自然な形で身につけたいと思う親が増えています。
幼稚園や保育園といった公教育では補えない部分を、幼児教室で補完し、全人格的な子どもの成長へつなげたいニーズがあります。
幼児教室開業の需要は、少子化で子どもを大切にしたい流れに沿ったもので、親の多様な要求に応えられるメニューを提供する必要があります。
今回は幼児教室の開業について解説していきます。
多種多様な幼児教室の内容を理解しよう
小学生以上の習い事の場合、学習塾、スポーツ少年団、ピアノや楽器、書道や絵画など、分野が分かれてきて、何の能力を伸ばすために習い事をするのかはっきりしています。
一方、幼児期の習い事は子どもの能力を総合的に伸ばしていくことが中心になります。
言葉や運動、音楽は、それぞれ別個に行うのではなく、一緒に行い総合的に発達させる方がいいという研究があります。全身を動かしながら言葉を憶えさせる、そのような取り組みこそ幼児教室の神髄になります。
幼児教室の類型を確認
幼児教室は、主に以下の4つの類型に分かれます。
幼児教室を開業したい場合、どのスタイルにするのか決める必要があります。
スタイル | 内容 |
---|---|
基礎能力を伸ばす知育系教育 | 読み書き、基本的な計算など小学校の学習内容の基本を身につけます。 フラッシュカードやパネルシアターなどを用いて、体感的に学びます。 座学ではなく、幼児に全身で基本的知識を身につけさせる内容です。 モンテッソーリ教育なども実践できると、長所になります。 |
才能を開花させる情操教育 | スポーツや音楽、芸術寄りの内容です。 実際に楽器やスポーツ用具に触れたり、リトミックなど音楽と体育を融合させたりしたメニューを提供します。 |
日本語以外を幼児期から学ぶ教育 | ジュニア英会話教室です。 ABCから始まり、簡単な英会話など、英語を楽しんで学べるようなプログラムを提供します。 文法などを教えるのではなく、子どもが日本語を憶えるのと同じように、会話、リスニングから入って体感として英語を身につけてもらいます。 |
幼稚園や小学校入学試験対策 | 幼稚園や小学校の「お受験」対策を行います。 面接や試験の練習、能力開発などをカリキュラムにします。 結果がすべてであり、合格実績が上がると受講者が増えるのは学習塾や予備校と同じです。 全人格的に子どもが評価されるよう、勉強以外の部分も伸ばしてあげる必要があります。 |
この4つのスタイルのいずれかを選び、幼児教室を開業することになるはずです。
もちろん、それ以外の新しい幼児教室のスタイルを模索していただいて構いませんが、現状、この4スタイルの幼児教室が圧倒的です。
4スタイルのうち2つ以上の内容を組み合わせることもできます。
全身を使って音楽に合わせて体を動かすリトミックを英語で行う、などすれば複数の能力を伸ばすことができます。
幼児教室を開業するのに必要な資格は?
幼児教室は公的な学校や保育所ではないので、必須資格はありません。
幼稚園教諭や保育士の資格を持っているに越したことはありませんが絶対ではありません。
多様なバックグランドを持てるように、ご自身の得意分野を明確にしておきましょう。
幼児教室の開業時に保護者に対して訴求力を発揮して、高く評価されるであろう資格には以下のようなものが挙げられます。
- 幼稚園教諭免許
- 保育士
- 幼児教育トレーナー
- 英語資格(TOEICや英検)
- ピアノなどを教えられる音楽教諭免許
- 乳幼児アドバイザー
- 幼児教育トレーナー
- リトミック講師
- モンテッソーリ教師
などになります。
完全に自分のカリキュラムで行うのか、フランチャイズに加入するのか
幼児教室として「〇〇式教育」を謳う企業、団体があります。
それらに加盟すれば「〇〇式教室」として、開業できます。
「〇〇式教室」のフランチャイズとなり、そのネームバリューを使って集客できます。
しかし、幼児教室での教育内容はそのカリキュラムに縛られますし、フランチャイザー(「〇〇式教育」の主催者」)の理念に共鳴できないとつらいでしょう。
もちろん、フランチャイズへの加盟料や毎月のフランチャイズ料金などを納付しなければならず、売上が伸びなければ経営が圧迫されてしまいます。
完全に個人オリジナルの幼児教室を開業する場合、フランチャイズ料などを支払う必要はありませんが、フランチャイザーのネームバリューが使えず、口コミと実績頼りの集客になります。
実力があれば遠方からも子どもを通わせたいという親も増えますが、実力が伴わないと、熱心な保護者には訴求せず、託児所や保育園代わりに使われるだけになるかもしれません。
これでは、開業した意味がなくなってしまいます。
幼児教室開業にあたり決めることをチェック
どのようなスタイルで幼児教室を開業するか決まったら、実際に開業するにあたり、物理的な条件を決めていきます。
幼児教育の理念を実現するためには、それを可能にする「場所」が不可欠になるからです。
自宅で開業するか、外部に教室を借りるか
幼児教室を開業する際、自宅で開業するか外部に物件を借りて開業するか、2つの方法があります。
幼児教室はあくまで民間の習い事という位置づけになるので、開業場所や開業場所の広さなどについての規制はありません。
学校など公共施設とは基準が異なるので、周囲の理解が得られれば、自宅、マンションなどで開業することも可能です。
一軒家や事業用物件を借りる必要はありません。
とはいえ、幼児教室の内容次第で開業場所は限られます。
音楽や体育中心の幼児教室の場合、自宅やマンションでは周囲の迷惑になります。
一方、座学中心ならば自宅開業も十分可能です。
あとはフランチャイズによっては、開業場所を指定しているところもあるかもしれません。
会社設立か個人事業主か
幼児教育を開業する際、会社設立をして「株式会社〇〇」という形で事業を立ち上げるのか、個人事業主として開業するのか2つの方法があります。
会社設立と個人事業主についてはメリットとデメリットがあり、それぞれよく比較検討してください。
会社設立 |
個人事業主 |
メリット |
|
社会的信用がある |
簡単に開業できる |
経費の範囲が広い |
定款などの作成義務がない |
責任の範囲が有限 |
自由な働き方ができる |
赤字繰り越しが10年である |
廃業手続きもすぐにできる |
利益次第で個人事業主よりも税率が下がる可能性 |
社会保険に加入できない。国民年金だけでは老後が心もとない |
最高税率が23.2%と所得税の約半分 |
|
デメリット |
|
設立までの手間がかかる |
社会的信用がない |
設立後の帳票作成や税務申告が大変 |
最大税率45%と法人税よりはるかに高い |
赤字でも法人住民税(均等割)がかかる |
無限責任で経営失敗のマイナスはすべて自分が負う |
社会保険へ加入しなければならない |
赤字繰り越しが3年までしかできない |
会社の廃業手続きが煩雑 |
経費で落とせる範囲が狭い |
会社設立か個人事業主かは、フランチャイズの場合、フランチャイザーが指定する可能性があります。
そうでない場合、ご自身の判断で会社設立か個人事業主かを決めます。
会社を設立した方が社会的信用が得られやすいですが、「寺子屋」的雰囲気の幼児教室を開業するならば個人事業主でも問題ないでしょう。
口コミや実績がなにより重視されますので、教育内容をブラッシュアップする方に注力した方がいいです。
また、売上や税金面を考えて会社設立か個人事業主かを決める方法もあります。
事業主体 | 会社設立 | 個人事業主 |
---|---|---|
所得税 | 代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その5%~45% | 事業の売上から「事業所得」を算出してその5%~45% |
個人住民税 | 代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その約10% | 事業の売上から「事業所得」を算出してその約10% |
消費税 | 課税売上1000万円以上の場合支払う(2年間は支払い義務がない特例もあり) | 課税売上1000万円以上の場合支払う |
法人税 | かかる(15%~23.2%) | なし |
法人住民税 | かかる | なし |
法人事業税 | かかる | なし |
個人事業税 | なし | かかる |
年間売上が約1000万円以上になると、個人事業主が納める所得税の方が、会社(会社設立後)が納める法人税よりも多くなる傾向があります。
もし、年間1000万円超の売上を当初から見込んでいるならば、開業時に会社設立をしてもいいでしょう。
社会的信用が高いのは事実なので一石二鳥です。
初年度、数百万円の売上見込みならば会社設立を焦る必要はありません。
個人事業主として開業後、売上が伸びてきたら法人化(会社設立)をすればOKです。
焦らなくて大丈夫です。
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開業費の見積もりと資金調達
幼児教室を開業する際、どのくらいの資金が必要なのでしょうか?
開業費用を大まかに見積もってみましょう。
【フランチャイズの場合:外部物件を借りる】
フランチャイズ幼児教室の独立開業費、資金内訳 | 開業金額 |
---|---|
物件取得(敷金礼金仲介料) | 200万円~300万円事務所賃貸、前家賃、資金、礼金(自宅開業は不要) |
フランチャイズ加盟料 | 100万円~500万円 |
内装工事 | 50万円~100万円 |
什器備品(机、ホワイトボードなど) | 30万円~50万円 |
パソコン、ネット回線 | 10万円 |
教材費 | 50万円~100万円 |
研修費 | 50万円~100万円 |
運転資金(当面の生活費) | 50万円~70万円×人数分 |
会社設立費用(会社設立する場合の法定費用) | 6万円~20万円 |
合計 | 1000万円前後 |
【個人経営の場合:外部物件を借りる】
個人経営幼児教室の独立開業費、資金内訳 | 開業金額 |
---|---|
物件取得(敷金礼金仲介料) | 200万円事務所賃貸、前家賃、資金、礼金(自宅開業は不要) |
内装工事 | 50万円~100万円 |
什器備品(机、ホワイトボードなど) | 30万円~50万円 |
パソコン、ネット回線 | 10万円 |
運転資金(当面の生活費) | 50万円~70万円×人数分 |
会社設立費用(会社設立する場合の法定費用) | 6万円~20万円 |
合計 | 500万円前後(1人会社の場合) |
フランチャイズで幼児教室を開業する場合、最大1000万円程度の開業資金が必要になります。
これはかなりのリスクになります。
開業にあたり、フランチャイザーから融資を受ける制度や、フランチャイザーが保証人になってくれることもありますが、いずれにせよ返済するのはみなさんです。
本当に「元を取れる」事業なのか考えてください。
個人経営でフランチャイズに加盟せず、自宅開業するならば、開業費用を大きく抑えることができます。
また、外部事務所ではなく、マンション開業であれば物件取得にかかる費用はおおよそ半減します。
大家さんとの交渉で、居住用不動産でも事業転用が可能かどうか交渉してみてください。
事業実績がない人が最大1000万円の開業資金を調達するのはかなり大変です。
自治体や日本政策金融公庫、商工会議所などの「創業融資」でも、自己資金半額としても500万円の融資は相当大変で、説得力ある事業計画書が作れるのかがポイントです。
ひょっとすると補助金等を受給できるケースがあるかもしれません。
いずれにせよ、幼児教育の開業資金調達については、開業、資金調達双方に詳しいコンサルタント、専門家のアドバイスを受けた方がいいでしょう。
「経営サポートプラスアルファ」は、開業資金調達以外にも、会社設立や開業後の経理、税務について総合的に相談できますので、幼児教育開業前にぜひご相談ください。
幼児教育開業にあたっては資金調達にも明るい「経営サポートプラスアルファ」に相談を!
幼児教育開業に際して、特にフランチャイズ形式で開業すると、多額の開業費用がかかることがわかりました。
幼児教育のニーズは高まっていますが、開業にあたって特に資格が必要なく、玉石混交状態です。
その中で需要をつかみ、売上を伸ばしていくためにどうすればいいのか、その戦略が大切になります。
幼児教室の目的、スタイル、場所など考えなければならないことが山積みです。
自分だけで判断せず、開業、資金調達、その後の税務なども見据えて、専門家のアドバイスを仰ぎましょう。
せっかく高いスキルがあるのですから、幼児教室にかける情熱をうまく生かしてください。
「経営サポートプラスアルファ」では、開業、資金調達、そして税務や会計に詳しいプロフェッショナルがおり、適切に情報提供させていただきます。
土日祝日夜間も対応しますし、遠隔地にお住まいの方はLINEやZOOM、チャットワークなどを利用していただくことができます。
開業コストを考えると失敗はできませんので、ぜひ「経営サポートプラスアルファ」まで開業方法、会社設立か個人事業主かなど、気になることは何でも相談してください。