会社を設立する際に重要となるのは取締役の人数です。
代表取締役や取締役は会社運営の中心的な役割となりますので、どの役職を何人用意するかは会社にとって非常に重要です。
重要であるがために取締役の人数は決定しづらいものです。
今回は会社設立時などに、取締役の人数を何人にするべきか最低人数などを踏まえご説明します。
取締役の人数は最低1人
会社法の内容を解釈すると、取締役の人数は最低1人です。
法律でどのように規定されているのかをまずはご説明します。
非公開会社の取締役は最低1人
株式会社の中でも非公開会社の場合、取締役の人数は最低1人と規定されています。
新会社法になる前は取締役の人数は3人以上と規定されていましたが、現在施行されている新会社法では取締役の最低人数が変更されています。
また、新会社法では取締役の人数とともに任期が変更されています。
任期が変更されていますので、その点も踏まえて取締役の人数は決定した方が良いでしょう。
具体的には以下のように取締役の人数と任期は変更されています。
取締役の人数 |
取締役の任期 |
監査役の人数 |
|
新会社法 |
1人以上 |
10年 |
0人でも可 |
旧会社法 |
3人以上 |
2年 |
1人以上 |
なお、取締役の人数を1人にするために重要なのは、株式会社を非公開会社にすることです。
非公開会社とは株式に譲渡制限などが設けられている株式会社を指しています。
定款などで株式の譲渡制限を設けていなければ非公開会社となりませんので、取締役の最低人数である1人では株式会社を設立できません。
基本的に1人で会社を設立するならば、非公開会社にして取締役の人数は1人にすると良いでしょう。
加えて取締役の任期は10年としておくのがおすすめです。
このように取締役の人数と任期を決定しておけば、1人で株式会社を設立した際に事務的な手間を省けるようになります。
公開会社の取締役は最低3人
先ほど非公開会社についてご説明しました。
非公開会社の場合は取締役の人数は1人でも問題ありません。
しかし、公開会社の場合は取締役が最低でも3人必要となります。
そもそも公開会社とは株式を自由に売買したり譲渡できる会社を指します。
非公開会社の場合は制限が設けられていますが、公開会社になるとこの制限がなくなります。
このような場合に取締役の人数が変更となるのです。
公開会社と聞くと「上場している株式会社」をイメージするかもしれません。
ただ、このイメージは誤っていて、上場していない株式会社でも公開会社として設立は可能です。
ご説明したとおり定款に株式の譲渡制限などが記載されていなければ、自動的に公開会社として設立されたことになります。
なお、会社法では「公開会社の取締役は最低3人」と定められていません。
最低3人必要となるのは、公開会社の場合は取締役会の設置が必須だからです。
取締役会を設置するためには取締役が最低3人必要ですので、結果として取締役の人数も最低3人いなければ株式会社を設立できなくなります。
公開会社と非公開会社では取締役会を設置する義務があるかどうかが異なります。
また、それに起因して必要となる取締役の人数も変化しますので、その点は理解しておくと良いでしょう。
取締役の上限人数は規定なし
取締役の最低人数は非公開会社であれば1人、公開会社であれば3人です。
この要件を満たしていれば株式会社の設立が可能です。
これと同時に理解してもらいたいのは、取締役の上限人数です。
最低人数と同様に上限人数の規定もあると考えるのは不思議ではありません。
しかし、取締役の上限人数については会社法などで定められていません。
関連する法律においても特に規定がありませんので、取締役の人数は何人に増やしても法律上の問題はないのです。
とはいえ、取締役は会社の方向性を決定する人物です。
そのような役割を担う人が多すぎると会社の方向性をスムーズに決定できません。
そのため、上限人数については規定がないものの、あまり多くの人数にしないのが無難です。
中小企業の取締役の人数を確認してみると、1人から3人の企業が多くなっています。
非公開会社であれば最低の1人、公開会社においても最低の3人だと思われます。
取締役は最低限の人数に抑えられているのです。
また、上場企業などの大手企業を確認してみても、取締役は10人程度以下です。
大手と言われる企業でも取締役が数人しかいないところも見受けられます。
多くの人数を雇用する大手企業ですら取締役の人数は限られていますので、中小企業ならば取締役は最低の人数としても差し支えないでしょう。
代表取締役の人数も最低1人
上記では取締役全体の人数についてご説明しました。
続いては取締役の中でも代表取締役の人数についてご説明します。
公開会社も非公開会社も最低人数は1人
代表取締役は当該会社でも非公開会社でも最低人数は1人です。
取締役が1人しかいなければその人が自動的に代表取締役となります。
また、取締役が複数人いる場合は代表取締役を決定しなければなりません。
この代表取締役は最低1人と定められているものの、取締役と同様に上限人数は規定されていません。
適切な手続きを踏めば代表取締役を何人も増やすことは可能です。
結論を述べると取締役全員を代表取締役にすることも可能です。
ただ、代表取締役は会社の代表権を持ちます。
代表権を持っていれば契約を締結できるなど、会社の経営に大きな影響を持ちます。
そのような人が会社に何人もいるのはあまり望ましい状況ではありません。
そのため、上限人数の定めはないものの、基本的に代表取締役の人数は1人する会社が多いです。
「代表取締役を1人にしなければならない」との規定はありませんので、その点は理解しておくと良いでしょう。
代表取締役を2人以上にする場合の注意点
基本的に代表取締役の人数は1人にしておくのが無難です。
ただ、会社経営の都合から代表取締役が複数人必要となる場合もあるでしょう。
そのような場合の注意点を以下でご説明しておきます。
代表取締役の人数について定款で定める
会社法などで代表取締役の上限人数は定められていません。
ただ、定款で人数について定められているケースが多々あります。
そのため、代表取締役の人数を複数人とする場合は、その旨を定款に定めるようにしなければなりません。
例えば一般的な株式会社では「代表取締役の人数が1人とする」などと定められています。
このような場合は代表取締役の人数を2人以上にはできません。
そのため代表取締役の人数を増やしたい場合は「代表取締役は1人以上とする」など、複数人になる可能性を示さなければなりません。
1人でも差し支えはないものの、複数人でも対応できるように記載しておきます。
もし現在の定款が複数人の代表取締役に対応していなければ、まずは定款を変更する作業から始めなければなりません。
定款の記載内容を無視して代表取締役の人数を2人以上にはできないのです。
会社実印は別のものを利用する
代表取締役はそれぞれ別の会社実印を利用する必要があります。
会社設立の際に会社の実印登録をしますが、これを複数人で利用するのは不可能です。
イメージしにくいかもしれませんが、会社実印は個人とも紐付いています。
会社としての実印には間違いがないのですが、自由に利用できるのではなく特定の人のみが利用できるのです。
そのため会社実印が必要ならば、代表取締役がそれぞれ印鑑を作成して登録しなければなりません。
ただ、登録が必要となるのは会社実印を必要とする代表取締役だけです。
代表取締役全員が会社実印を登録しなければならないルールはありません。
誰かしら1人が会社実印を登録していれば、他の代表取締役は会社実印を登録しない選択ができます。
取締役の人数は何人が最適なのか
取締役や代表取締役の最低人数についてご説明しました。
続いては最低の人数を踏まえて、取締役は何人にするべきか考えてみましょう。
基本的には最低人数で問題なし
明確な理由がなければ取締役の人数は基本的に最低限で良いでしょう。
非公開会社の場合は1人ですし、公開会社の場合は3人です。
会社の方針決定などに影響しますので、闇雲に人数を増やすのは望ましくありません。
取締役の人数が多くなると、それだけ意見のすれ違いが起きやすくなります。
意見のすれ違いが起こるとすり合わせに時間を要してしまい、スムーズな経営判断が出来なくなってしまいます。
会社経営には慎重さもスムーズさも両方を求められますので、スムーズな経営判断を阻害する要因を減らすべきです。
もちろん取締役の人数を増やすのが悪いわけではありません。
例えば親族を取締役にして、役員報酬を支払いたい場面などあるでしょう。
理由をもって取締役の人数を増やすのを否定するつもりは全くありません。
一般論として取締役の人数が増えすぎると経営判断が遅くなりがちです。
そのため、最低人数から多くとも3人程度に押さえておくのが無難です。
大手企業などの取締役の人数を参考にしない
先ほど説明したとおり上場企業などでは取締役の人数が10人程度の場合もあります。
そのため人によっては「取締役の人数は多くても良い」と捉えてしまうかもしれません。
上場企業などの取締役の人数が多いのは、それぞれ理由があります。
例えば人によって担当している分野が異なり、役割分担するために取締役を増やしているのです。
闇雲に人数だけを増やしているのではありません。
そのような背景を理解せずに取締役の人数だけを増やすと心配してしまいます。
大手企業などの取締役の人数は参考にしないようにしましょう。
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まとめ
取締役の人数はご説明したとおり最低1人です。
公開会社の場合は取締役会の設置が必要となりますので、これが影響して最低人数は3人となります。
また、取締役の人数に上限の規定はありません。
そのため必要に応じて増やしても何ら問題は発生しません。
ただ、取締役の人数が増えると経営判断が遅くなるなどの問題が起きる可能性があり、必要最低限の人数に留めておくのが無難です。
なお、会社を経営していくにあたり取締役の人数に悩んだ際は経営サポートプラスアルファにご相談ください。
皆さんの会社の状況をヒアリングして、どのような役割の取締役を何人にするべきかアドバイスいたします。