勤務医の節税にはいくつかの方法がありますが、多くの副業をこなしている場合、プライベートカンパニーの設立による節税がもっとも効果的です。
節税を考え始めた人の中には、「どの程度の収入から節税効果がでるのか?具体的な節税効果は?」など、いくつかの疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。
記事内ではプライベートカンパニーのメリットや注意点、設立時期の考察など、節税に関する内容を網羅的に紹介しています。
節税について具体的に考えている勤務医の人は、ぜひ記事内容をご確認ください。
プライベートカンパニーとは
プライベートカンパニーとは、主に医療行為で得る報酬以外の収入を節税する目的で設立する会社のことを指します。
以下、プライベートカンパニーで出来ることや、設立を考える時の目安を紹介します。
プライベートカンパニーで出来ること
プライベートカンパニーを持つ大きなメリットは節税です。
勤務医として働きつつ、自分の会社を設立し、副業で得た収入をプライベートカンパニーの収益として、法人税の対象にします。
オーナーやその家族が所有する一般事業や不動産、株や預貯金の資産を保有、管理することも可能です。
あえてプライベートカンパニーでなく、個人事業主としても良いのですが、収入が増えれば増えるほど、プライベートカンパニーで得る節税効果が高くなります。
副業収入として、ある程度の収入を得ていればプライベートカンパニーの設立を考えたほうが良いでしょう。
プライベートカンパニーの設立を考える目安
プライベートカンパニー設立の目安は、一般的に課税所得が800万円を超えた段階とされています。
課税所得金額が800万円を超えると、多くのケースで法人税のほうが税率が低くなるためです。
より大きな節税効果を得ることができます。
家族を役員や社長に据えると、所得の分散が進み、大きな節税効果が得られることも。
なお、副業の所得金額800万円以下でプライベートカンパニーを設立すると、設立費用や運営費で赤字になるケースもあります。
プライベートカンパニー設立のメリットと注意すべきポイント
節税効果が高いプライベートカンパニーですが、得られるメリットの反面、注意点もあります。
それぞれ3つの項目にて、内容を紹介します。
メリット
想定されるメリットは以下の3点です。
1.事業所得への振り分けによって税率が低くなる
プライベートカンパニーの設立は、法人という財布が一つ増えることを意味します。
所得を個人と法人に分けることで、所得分散の効果が期待できます。
個人への税率は増税傾向ですが、法人税は減税傾向です。所得をうまく法人税へ振り分けることで、有効な税金対策を講じることができます。
家族を社員や役員とすることで、より分散効果を高めることも可能です。
なお、医療行為による報酬は、プライベートカンパニーで受け取ることができません。
したがって、副業の執筆や講演、不動産投資による収益をプライベートカンパニーに割り当てると良いでしょう。
2.認められる経費の項目が多くなる
勤務医でも特定支出控除を活用すると、経費として認められる項目が増えますが、法人化をすると、さらに多くの項目が経費として認められます。
主な経費項目は以下のとおりです。
- パソコンの購入費
- 車両購入費
- 不動産を社宅として購入した費用
- 専門書の購入費
- 接待交際費
特定支出控除と重なる項目もありますが、車や住宅購入費は法人化しないと経費にできません。
事業所得は他の所得と損益通算できますので、うまく調整すると大幅な節税が可能です。
3.相続税対策
不動産や有価証券などの財産を法人名義にすると、相続の手続きが簡単になり、相続税の税率を下げることもできます。
相続税においても、個人に厳しく法人に優しい傾向は同じです。
財産はプライベートカンパニーの名義にしておいたほうが後々の心配も少なくなります。
事業承継の観点から考えても、トラブルを未然に防ぐことができます。
財産を法人名義へ変更する節税方法は、昔から受け継がれてきた古典的な手法です。
方法が体系化されており、専門家へ依頼するとすぐ手続きを進めてくれるでしょう。
注意点
注意点は以下の3点です。
1.設立費用と運営費用がかかる
会社を設立するための法人登記費用として、法定費用、謄本代、会社印など諸々あわせると、約20万円〜30万円前後の費用が必要です。
手続きが煩わしく、本業の傍ら、自分で手続きをすすめるのは現実的ではありません。
したがって、行政書士などの専門家へ依頼することを前提に考えると、実際にかかる費用は約40万円〜50万円です。
会社には、税務関連のスペシャリストである税理士が必要になるため、会社設立後は顧問料が月額3万円〜5万円かかります。
ある程度の副収入がないとせっかくプライベートカンパニーを作っても、余計な手間ばかり増えて節税効果が得られなかった、ということになりかねません。
2.勤務先への説明と理解
報酬をもらっている医療機関や企業に、医療行為以外の収入を別にしてほしいと説明の上、理解して貰う必要があります。
了解されるか否かは、勤務先の方針次第です。
雇用契約上、従業員として雇われている場合、勤務医として働いている病院からもらう給与所得は別々にはできません。
どうしても分けたい場合、雇用形態を業務委託などに変えてもらう必要があります。
非常勤として別の医療機関を手伝う場合や、副業としての講演や執筆で得る収入は、法人用にしてもらいましょう。
3.医療行為で得た報酬はプライベートカンパニーで受け取れない
医療行為の対価として得た報酬は、営利企業である一般企業では受け取れません。
したがって、プライベートカンパニーとして報酬を受け取ることができません。
非常勤のアルバイト医師として、他の病院で行う医療行為の報酬は、プライベートカンパニーで受け取れません。
医療行為以外の報酬は受取り可能です。
医療行為とその他の業務をしっかりと切り分けておきましょう。
いっしょにしてプライベートカンパニーで受け取ってしまうと、税務調査により追徴課税が課されることがあります。
プライベートカンパニーにおすすめの事業
プライベートカンパニーで扱うことが多い事業を3つピックアップしました。
不動産投資
不動産投資は、仕組みを構築して収益を獲得するタイプの副業です。
なにかと忙しい勤務医にもっとも向いているといっても過言ではありません。
勤務医の仕事はハードなので、勤務医としての業務以外にできる副業は限られます。
その点不動産投資は、仕組みだけを構築してうまく軌道に乗れば、さほど手がかかることはありません。
不動産オーナーの仕事は、不動産市況を適宜確認し、状況に応じて不動産の保有割合を調整することに限られます。
不動産投資は将来の資産形成としても有効な運用方法です。
株式投資
不動産投資に比べると価格変動リスクが高い株式投資ですが、プライベートカンパニーで扱う副業としての選択も有効です。
給与所得など他の所得との損益通算はできませんが、配当所得との損益通算や損失を3年間繰越できる繰越控除が利用できます。
勤務医は本業が忙しいため、頻繁な売買で収益を得るよりも、配当利回りが高く、比較的値動きが少ない大型株へ投資すると良いでしょう。
原稿執筆や講演など
専門性を活かした原稿執筆や講演は、医師ならではの副業です。
専門性の高さから、それなりの報酬を獲得できるでしょう。
不動産投資や株式投資に比べて、自分で手を動かして現地へ出向くなど、報酬を得るのに少々手間がかかります。
自分の勤務状況を考えつつ、うまく時間をつかって対応しましょう。
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プライベートカンパニー設立の流れ
プライベートカンパニー設立の基本的な流れを紹介します。
あらかじめ流れを抑えた上で、設立まで計画的に進めましょう。
- 設立の計画とシミュレーションを行う
- 社名や所在地、登記申請日と資本金を決める
- 事業目的を決める
- 定款を定めて申請の準備を進める
- 登記申請
- 税務署にて各手続きを進める
まずは設立シミュレーションを行い、社名や資本金、事業目的など、会社の骨格となる項目を決めましょう。
事業目的は、ある程度一貫性があって誰が見てもわかるものを選びます。
定款とは会社のルールを定めたもので、会社設立にあたって必ず作成する必要があります。
定款は電子定款でも対応可能です。
会社登記の申請先は法務局で、オンライン申請も可能です。
一通り申請が終わったら、管轄の税務署へ法人設立届などの必要書類と青色申告承認申請書など必要書類を提出して完了です。
まとめ
勤務医の節税方法はいくつかありますが、プライベートカンパニーによる法人化がもっとも高い節税効果を得られます。
プライベートカンパニーで扱う事業は、不動産投資や株式投資、原稿執筆や講演などです。
得られる節税効果は、認められる経費の項目が増えることと、家族を役員や社員にすることで得られる所得分散効果です。
医療行為による報酬は一般法人で受け取れない点は、しっかりと抑えておきましょう。
また、財産を会社名義にすることで、相続資産を圧縮できる点も見逃せないポイントです。
副業にかかる税率が多いときに、プライベートカンパニーの存在は大きな役目を果たします。
経営サポートプラスアルファでは、勤務医の法人化や節税について相談を承っています。
また、法人設立の際に必要な手続きのサポートも行っていますので、ご検討の際はぜひご相談ください。