【税理士が解説】1人で株式会社を設立する方法とメリット・デメリット

株式会社というと、複数の役員や株主が必要な大規模な法人形態だと考える人が多いかもしれません。しかし、実際には1人で株式会社を設立し、経営することが可能です。1人で株式会社を運営することで得られる自由度やメリットも多く、特に起業家や個人事業主にとって、事業を発展させるための有力な選択肢となっています。

この記事では、1人で株式会社を設立する際の手続きや、メリット・デメリットを詳しく解説します。

まず、結論から言うと、1人でも株式会社を設立することは可能です。かつては、株式会社を設立するために最低2人以上の役員や株主が必要とされていましたが、会社法の改正により、現在では1人でも設立することができます。これにより、起業を考える個人やフリーランスの方でも、株式会社という形で法人化することが容易になりました。

1人で株式会社を設立する際のポイントは、代表取締役(通常は設立者本人)と株主(出資者)が同一人物であることです。この場合、経営上の意思決定は全て1人で行うことができ、事業運営に関する柔軟性が大幅に向上します。

1-1. 1人で株式会社を設立する流れ

1人で株式会社を設立する際の基本的な手続きは、一般的な株式会社設立とほぼ同じです。以下の手順で進めることができます。

1-1-1. 会社名と事業内容の決定

最初に、設立する株式会社の会社名事業内容を決定します。会社名は後に登記され、社会的な信用を築くための重要な要素となりますので、慎重に選びましょう。また、事業内容は定款に記載されるため、今後のビジネス展開に合わせた内容を具体的に考える必要があります。

1-1-2. 定款の作成と認証

次に、会社の定款を作成します。定款には、会社の基本情報(会社名、所在地、事業目的、資本金など)が記載され、これに基づいて会社の運営が行われます。定款の作成後、公証役場で定款の認証を受けます。1人で株式会社を設立する場合でも、この手続きは必須です。

1-1-3. 資本金の払い込み

定款認証後、設立する会社の資本金を指定の銀行口座に払い込みます。資本金は1円から設定可能ですが、適切な額を用意することで会社の信頼性を高めることができます。払い込みが完了すると、振込明細書を資本金の証明書類として使います。

1-1-4. 法務局への登記申請

資本金の払い込みが終わったら、最後に法務局で会社の登記を行います。この手続きが完了することで、正式に1人で株式会社を設立することができます。登記が完了すれば、会社の法人格が認められ、法人名義での取引や契約が可能になります。

1-2. 最低限必要な書類

1人で株式会社を設立する際に、最低限必要な書類は以下の通りです。

  • 定款:会社の基本情報や運営方針を記載した書類。
  • 資本金の払い込み証明書:資本金が適切に払い込まれたことを証明する書類。
  • 登記申請書:法務局に提出する会社設立のための申請書類。
  • 印鑑証明書:代表取締役の印鑑証明書が必要です。

これらの書類を揃えて法務局に提出することで、1人でも簡単に株式会社を設立することができます。

1人で株式会社を設立することには、いくつかのメリットがあります。個人事業主やフリーランスで活動している方にとって、株式会社化することで得られるメリットは大きく、ビジネスの成長を後押しします。

2-1. 信用力の向上

株式会社という法人格を持つことで、ビジネスにおける信用力が大幅に向上します。特に、取引先や顧客に対して、法人であることを示すことで信頼を得やすくなります。また、融資や資金調達を行う際にも、個人事業主に比べて株式会社の方が信用度が高いとされ、銀行からの融資を受けやすくなる点も大きなメリットです。

2-2. 節税効果が期待できる

株式会社を設立することで、節税効果を享受できる可能性があります。個人事業主の場合、所得に対して累進課税が適用され、所得が増えるほど税率も上がります。しかし、株式会社の場合、法人税率は一定であり、役員報酬や経費を計上することで課税所得を調整することができます。これにより、個人事業主よりも税負担が軽減されるケースが多く見られます。

また、消費税の免税制度を活用することもできます。設立した会社の売上が1,000万円未満の場合、2年間は消費税の納税義務が免除されるため、事業を軌道に乗せるまでの期間に税負担を抑えることが可能です。

2-3. リスクの分散

個人事業主は、事業に失敗した場合、個人資産を含めて負債を背負うリスクがあります。しかし、株式会社を設立することで、個人の資産と法人の資産が分離され、万が一会社が負債を抱えても、個人の資産が保護されるメリットがあります。これにより、事業に挑戦しやすくなり、リスクを分散することができます。

2-4. 株式発行による資金調達

株式会社であれば、将来的に株式を発行して資金調達を行うことができます。特に、事業が拡大した際に、投資家からの資金を集めやすくなる点がメリットです。1人で運営している間は株主が1人(自分)であっても、将来的に株式を他者に販売することで、事業の規模を拡大させる可能性があります。

一方で、1人で株式会社を設立・運営することにはいくつかのデメリットも存在します。これらの点を考慮し、会社設立後の計画をしっかり立てることが重要です。

3-1. 設立コストと運営コストがかかる

株式会社を設立するためには、設立費用がかかります。定款の認証費用や法務局への登録免許税などが必要で、個人事業主と比べると初期コストが高くなります。一般的には、株式会社設立にかかるコストは約20万円程度とされています。

また、設立後も維持費がかかります。例えば、税理士の報酬や会計ソフトの使用料、法人住民税など、事業を運営するために発生する費用が継続的にかかる点は、個人事業主と比べて大きな負担となります。

3-2. 複雑な税務申告

株式会社の場合、税務申告が個人事業主に比べて複雑になります。決算書の作成や法人税の申告、消費税の対応など、経理や税務処理が多岐にわたるため、税務の知識が必要です。また、税理士に依頼する場合は、その費用も考慮する必要があります。

3-3. 社会保険の強制加入

1人で株式会社を設立した場合でも、法人である以上、社会保険への加入が義務付けられます。個人事業主の場合は、国民健康保険や国民年金に加入することが一般的ですが、株式会社の場合は社会保険に切り替える必要があります。これにより、保険料の負担が増える可能性があるため、設立前に社会保険料についても計算しておくことが重要です。

1人で株式会社を設立し、成功するためには、いくつかの重要なポイントがあります。これらの点を押さえながら、計画的に事業を展開することが大切です。

4-1. 事業計画を明確にする

株式会社を設立する前に、明確な事業計画を立てることが必要です。設立後の資金繰りや収益見通しを十分に考慮し、経営の安定化を図ることが重要です。1人での運営は自由度が高い反面、計画性を持たないと資金不足や経営難に陥るリスクが高まります。

4-2. 専門家のサポートを活用する

税務や法務に関しては、専門家のサポートを受けることが推奨されます。特に、1人で経営する場合、全ての業務を自分一人でこなすのは困難です。税理士や弁護士の力を借りることで、スムーズな運営が可能になります。

4-3. ネットワークの構築

1人で株式会社を設立した場合でも、人脈を活用することが成功のカギとなります。取引先や顧客、同業者との関係を築き、適切なサポートやアドバイスを受けられる環境を整えることが重要です。

1人で株式会社を設立することは、個人事業主に比べて多くのメリットがあり、事業の発展に向けた大きなステップとなります。特に、信用力の向上や節税効果、リスク分散といった点で有利です。一方で、設立費用や税務処理の複雑さ、社会保険の加入などのデメリットも考慮し、事前に十分な計画を立てることが求められます。

株式会社1人で設立することにより、事業の発展を目指しながら、持続的な成長を実現しましょう。

ぜひ、経営サポートプラスアルファにご相談ください。

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