【税理士が解説】一般社団法人の設立費用とは?設立手続きについても詳しく解説

一般社団法人は、利益を追求する事業だけでなく、公益性の高い活動を行う団体として広く利用されています。特に、NPO活動や地域社会の支援、教育・文化の振興などを目的とする場合、一般社団法人を設立することが多くなっています。しかし、一般社団法人の設立にはいくつかのステップがあり、その過程でかかる設立費用も把握しておくことが重要です。

本記事では、一般社団法人設立に必要な費用とその手順について詳しく解説し、設立を検討する際の参考にしていただける内容を提供します。

まず、一般社団法人の基本的な定義について理解しておきましょう。一般社団法人は、法人格を持つ団体であり、法律に基づいて設立されます。社団法人は、会員や社員と呼ばれる複数の人々が共通の目的を持って設立する組織で、主に利益を追求しない事業や公益性の高い活動を行うために設立されることが多いです。

営利法人である株式会社とは異なり、一般社団法人の目的は利益の配当を行わず、余剰金を団体の活動に充てるという点が特徴です。また、一般社団法人は「社員総会」という意思決定機関を持ち、法人の運営や活動内容については社員総会で決議されます。

公益社団法人との違い

一般社団法人は、公益性の高い活動を行う団体として設立されることが多いですが、「公益社団法人」とは異なり、必ずしも公益性を条件とするわけではありません。公益社団法人は、さらに公益認定を受けた社団法人で、国から公益性が高いと認められた場合に取得できる法人格です。一方で、一般社団法人は公益性に限定されず、さまざまな目的の団体が設立できるという柔軟さを持っています。

一般社団法人を設立する際には、設立費用が発生します。この費用は、法人格を取得するための法的手続きに伴うものであり、主に以下の項目から構成されます。

1. 定款作成費用

一般社団法人を設立するためには、まず定款を作成する必要があります。定款は、法人の基本的な運営ルールを定めた書類であり、法人設立において必須の書類です。定款を作成する際には、以下の内容を明記する必要があります。

  • 法人の名称(一般社団法人という文言を含む)
  • 事業目的:法人が行う事業の内容
  • 本店所在地:法人の拠点となる住所
  • 社員の権利・義務:社員総会や運営方法
  • 資産の帰属:解散時の資産処理方法

定款の作成には、紙の定款電子定款という2つの方法があります。電子定款を利用する場合、印紙代が不要となるため、費用を抑えることが可能です。

紙の定款の場合

  • 収入印紙代:4万円

電子定款の場合

  • 収入印紙代は不要(電子定款により印紙税を免除)

2. 定款認証費用(公証人役場での手数料)

一般社団法人を設立するためには、作成した定款を公証人役場で認証してもらう必要があります。公証人による定款の認証がなければ、設立手続きを進めることができません。認証を受ける際には、以下の費用が発生します。

  • 定款認証費用:5万円
  • 謄本代:おおよそ2,000円〜4,000円(ページ数により変動)

この認証は、定款が法的に有効であることを確認するための手続きであり、法人設立の第一ステップとして重要です。

3. 登記申請にかかる費用

定款の認証が完了したら、次に法人登記の手続きを行います。法人登記は、法務局に対して法人設立の届け出を行う手続きであり、登記が完了することで法人格が正式に認められます。この際にも費用が発生します。

  • 登録免許税:6万円(設立時に一度だけ発生する費用)

この登録免許税は、法務局に対して支払うもので、法人設立の際に必要な税金です。設立時の資本金や社員の数にかかわらず、一般社団法人の登録免許税は一律6万円です。

4. 法人印鑑の作成費用

一般社団法人を設立する際には、法人印鑑を作成する必要があります。法人印鑑は、登記申請時や法人としての契約書に押印するために必要であり、設立後の各種手続きでも使用します。印鑑の種類や材質によって費用が変動しますが、以下のような価格帯が一般的です。

  • 法人印鑑作成費用:1万円〜3万円程度

法人印鑑は、会社の象徴とも言えるものであり、適切なデザインや材質を選ぶことが重要です。

5. その他の費用

一般社団法人設立には、その他にもいくつかの費用がかかる場合があります。例えば、設立手続きを専門家に依頼する場合には、司法書士や行政書士への報酬が発生します。

  • 専門家への依頼費用:5万円〜15万円程度

また、法人設立後には、各種行政手続きや銀行口座開設なども行う必要がありますが、これらに伴う手数料も考慮しておくべきです。

6. 初期運営資金

設立費用とは別に、法人として活動を開始するための初期運営資金も必要です。オフィスの賃貸料、スタッフの給与、活動に必要な備品購入など、法人としての運営に伴う費用は事前に準備しておく必要があります。特に、活動初期に売上が発生しない場合でも、一定の運営資金が必要となるため、設立前にしっかりと計画しておきましょう。

一般社団法人を設立するためには、定款の作成と認証、法人登記というステップを踏む必要があります。以下では、設立の手順を具体的に説明します。

1. 社員の決定と定款の作成

まず、社員を決定します。一般社団法人を設立するためには、2人以上の社員が必要です。社員とは、法人の意思決定に参加するメンバーのことであり、出資者や役員とは異なります。次に、定款を作成し、法人の基本的な運営ルールを定めます。

2. 公証人役場での定款認証

定款を作成したら、公証人役場で定款の認証を受けます。認証手続きを経ることで、定款は法的に有効な文書となります。この段階で、定款作成にかかる費用や認証費用を支払います。

3. 法人登記の申請

定款の認証が完了したら、次に法務局に登記申請を行います。この手続きにより、法人格が正式に認められます。法人登記の際には、登録免許税や必要書類を準備し、登記を行います。

4. 法人印鑑の登録

法人設立後には、法人印鑑の登録が必要です。法人印鑑は、契約書への押印や登記手続きに使用される重要な印鑑です。登録が完了すると、法人としての活動が本格的にスタートします。

一般社団法人を設立することには、いくつかのメリットがあります。ここでは、設立の主な利点を紹介します。

1. 法人格を持つことで信頼性が向上

一般社団法人を設立することで、法人格を取得でき、対外的な信用力が向上します。これにより、取引先や行政機関からの信頼を得やすくなり、助成金や補助金を受けやすくなる場合もあります。

2. 社員の数に制限がない

一般社団法人は、社員の数に制限がありません。少人数でも設立でき、将来的に社員を増やすことも可能です。これにより、柔軟な組織運営が可能となります。

3. 利益配当がないため、非営利活動に適している

一般社団法人は、利益配当を行わないため、非営利活動に適した法人形態です。利益が発生した場合でも、それを社員に分配するのではなく、事業の継続や拡大に再投資することが求められます。

一般社団法人の設立には、定款作成費用、定款認証費用、登録免許税、法人印鑑作成費用など、さまざまな費用がかかります。また、設立後の運営資金も事前に確保しておくことが重要です。

設立手続きを進める際には、定款の作成や法人登記など、各ステップをしっかりと把握し、費用を正確に見積もることが成功への鍵となります。一般社団法人を設立することで、法人格を取得し、信頼性を高めながら、非営利活動や公益性の高い事業を展開することが可能です。

会社設立の代行費用0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順
一般社団法人の設立はどうすればいいの?費用や手続きの流れなどを解説!
最新情報をチェックしよう!