【税理士が解説】一人親方の法人化のタイミングとは?法人化する理由も紹介

一人親方として独立して働く方々は、個人事業主としての活動が多いですが、事業が軌道に乗り始めると「法人化」について検討することが増えてきます。特に、法人化することによって税務上のメリットや信用力の向上が期待できるため、一人親方が法人化を選ぶケースが増えています。本記事では、一人親方が法人化を検討する際のメリットと手続きについて詳しく解説します。

まず、一人親方とは、個人事業主として独立して事業を行う者を指し、主に建設業や運送業、サービス業など、特定のスキルを持った専門職の方々に多く見られます。個人事業主として活動し、仕事の請負契約などを行って収入を得る形態が一般的です。

一人親方は、従業員を雇わず、自身が現場や業務をこなすことで収入を得ており、税務申告や社会保険料などの管理をすべて自分で行う必要があります。法人化していないため、事業主自身が直接利益を得る形となりますが、その反面、税負担や社会保険料の問題が大きくなることもあります。

一人親方が法人化を検討する主な理由は、節税効果事業の信頼性向上にあります。個人事業主としての事業運営に限界を感じた際や、事業が大きく成長し始めたタイミングで、法人化が選択肢として浮上することが多いです。

1. 節税効果

一人親方として活動していると、収入が増えるにつれて所得税の負担が大きくなります。日本の税制度では累進課税が適用されるため、所得が増えるほど税率が上がり、最大45%にも達することがあります。一方で、法人化すれば、法人税は一律の税率(約23%)が適用されるため、税負担が軽減されることが期待できます。

さらに、法人化すると役員報酬を自分に支払う形で所得を分散することができ、給与所得控除も活用することで個人の所得税を軽減することができます。これにより、収入が増加する一人親方にとって、法人化は非常に有効な節税対策となります。

2. 社会保険料の最適化

個人事業主として活動していると、国民健康保険国民年金に加入することになりますが、収入が増えるとその保険料も上昇します。法人化することで、法人として厚生年金や健康保険に切り替えることができ、社会保険料の負担を最適化することが可能です。

役員報酬を調整することで、社会保険料の支払いをコントロールし、負担を軽減することもできます。これにより、短期的なコスト削減が可能になるだけでなく、将来的な年金受給額の増加も期待できるため、一人親方が法人化を選ぶ大きな理由の一つとなっています。

3. 事業の信用力向上

法人化すると、事業の信用力が大幅に向上します。一人親方として活動していると、取引先やクライアントに対してはあくまで個人としての契約になりますが、法人化することで、法人名義で契約を結ぶことができ、信頼性が増します。

特に、建設業や運送業など、BtoBの取引が多い分野では、法人としての取引を求められるケースも少なくありません。法人化することで、大手企業や新規の取引先との契約がスムーズに進み、事業拡大のチャンスを得やすくなるというメリットがあります。

4. 融資や資金調達のしやすさ

法人化することで、金融機関からの融資が受けやすくなります。個人事業主としての活動では、融資の際に自己資本や信用力が不足しがちですが、法人化することで財務状況を示す決算書を作成できるため、金融機関からの信頼が増し、必要な資金を調達しやすくなります。

また、法人としての財務体制が整うことで、より有利な条件での融資や資金調達が可能になるため、事業の成長を加速させることができるでしょう。

5. リスクの分散

個人事業主として活動していると、事業に失敗した際の負債やリスクはすべて個人に帰属しますが、法人化すると、法人が独立した法的な人格を持つため、万が一事業が失敗したとしても、個人の財産が直接リスクに晒されることはありません。

これにより、事業のリスクを分散しながらも、個人の資産を守ることができるため、事業の安全性が高まります。

法人化のプロセスは、しっかりとした計画と正確な手続きが必要です。以下では、具体的な法人化の手順を説明します。

1. 会社の形態を決める

一人親方が法人化する際には、株式会社または合同会社を設立するのが一般的です。

  • 株式会社: 株主が出資し、取締役が経営を行います。信頼性が高く、資金調達がしやすいですが、設立費用が高く、管理が複雑です。
  • 合同会社: 株主総会が不要で、設立コストも安いため、シンプルな運営を希望する一人親方に向いています。

どちらの形態を選ぶかは、事業の規模や今後の成長見込みに応じて決めることが重要です。

2. 定款の作成

次に、会社のルールを定めた定款を作成します。定款には、会社の名称、事業内容、資本金、役員構成などを記載します。株式会社の場合、定款は公証人役場で認証を受ける必要がありますが、合同会社では認証は不要です。

3. 資本金の払い込み

法人化には、資本金の払い込みが必要です。現在では資本金は1円からでも可能ですが、信頼性を高めるためには最低でも数十万円程度の資本金を用意するのが一般的です。資本金を個人口座に一時的に預け、その後法人としての口座を開設し、資本金を移行します。

4. 登記申請

定款の認証と資本金の払い込みが完了したら、法務局に登記申請を行います。登記申請に必要な書類として、定款、資本金払込証明書、発起人や役員の印鑑証明書などがあります。登記が完了すると、正式に法人としての活動が認められます。

5. 税務署や市区町村への届出

法人設立後、税務署や市区町村への届出が必要です。これには、法人設立届出書や青色申告の承認申請書などが含まれます。また、社会保険事務所への届け出も忘れずに行いましょう。

法人化には多くのメリットがある一方で、いくつかの注意点も存在します。

1. 設立費用と管理コスト

法人化には、設立費用がかかります。株式会社の場合は約20万円~30万円程度、合同会社でも約10万円~20万円の費用が必要です。また、設立後も税理士や社会保険労務士に依頼する場合、毎月の顧問料が発生し、個人事業主としての運営よりもコストがかかる点に注意が必要です。

2. 毎年の決算と税務申告

法人化すると、毎年の決算書作成や税務申告が必要になります。個人事業主と比べて帳簿の管理が厳格に求められるため、税理士に依頼するケースが多く、経営コストが増加する可能性があります。

3. 社会保険の強制加入

法人化すると、経営者も社会保険に強制加入することが義務付けられます。個人事業主としては国民健康保険や国民年金に任意で加入できますが、法人化後は厚生年金や健康保険に加入しなければなりません。この結果、保険料負担が増加する場合がありますが、将来的には年金受給額が増えるため、長期的にはメリットとなることもあります。

一人親方が法人化を検討するタイミングとしては、収入が増加し、税負担や社会保険料の負担が重くなった場合が多いです。法人化することで、節税効果や信用力の向上、融資のしやすさなど多くのメリットを享受できますが、設立費用や運営コスト、社会保険の加入なども考慮する必要があります。

最適なタイミングで法人化を行い、事業をより発展させるためには、専門家のアドバイスを受けながら計画的に進めることが重要です。

ぜひ、経営サポートプラスアルファにご相談ください。

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