【税理士が解説】合同会社の税金に関する基礎知識と節税ポイント

合同会社は、低コストで設立でき、運営の自由度が高いため、多くの起業家や中小企業にとって魅力的な法人形態です。しかし、合同会社であっても法人である以上、税金の支払いは避けられません。会社を設立する際には、税制をしっかりと理解し、適切な税務対策を取ることが重要です。

この記事では、合同会社が支払う必要のある税金の種類や、それらに対する節税の方法について解説します。

合同会社は法人格を持つため、法人としての税金が発生します。これには、法人税、消費税、法人住民税、法人事業税など、いくつかの税目が含まれます。これらの税金を適切に管理することが、健全な会社運営には不可欠です。

1-1. 法人税

合同会社が支払う主な税金の一つが法人税です。法人税は、会社が事業を通じて得た利益に対して課税される税金です。つまり、合同会社が1年間に得た利益(収入から経費を差し引いた金額)に応じて、税金が課されます。

法人税の税率は、会社の所得額によって異なります。例えば、中小企業であれば、年間の課税所得が800万円以下の場合、15%の法人税率が適用されます。それ以上の所得に対しては、23.2%の税率が課されます(2023年度の税率を基準としています)。

1-1-1. 利益が出ない場合は法人税がかからない

法人税は、会社の利益に対してのみ課税されるため、たとえば設立初年度や赤字の年度では法人税を支払う必要がありません。この点は、事業が安定していない初期段階の企業にとって、負担を軽減する大きなメリットとなります。

1-2. 法人住民税

法人住民税は、会社が所在する自治体に対して支払う税金です。法人住民税は、法人税額に基づいて計算される「法人税割」と、会社の規模や資本金に応じて課される「均等割」の2つの要素で構成されています。

  • 法人税割:法人税額を基準に、自治体ごとに定められた税率が適用されます。
  • 均等割:法人の規模に応じて一定額が課されます。たとえば、資本金1,000万円以下の法人であれば、年額7万円が均等割として課税されます。

法人住民税は、利益が出ていなくても最低限の負担として支払う必要があります。特に、均等割は利益に関係なく発生するため、赤字の年でも納税義務が生じます。

1-3. 法人事業税

法人事業税も、合同会社が事業を行う都道府県に対して支払う税金です。法人事業税は、法人の所得に応じて課税されるため、利益が発生した場合にのみ支払いが必要です。税率は、事業を行う地域や業種によって異なりますが、一般的な税率は3.3%から5%の範囲です。

法人事業税は、利益が出ない年度には支払いがないため、法人税と同様に、赤字の年には負担が発生しません。

1-4. 消費税

消費税は、合同会社が事業活動を通じて商品やサービスを提供した際に、取引先や顧客から預かる税金です。合同会社は、これを国や地方自治体に納税する義務があります。

消費税の納税義務は、基準期間(通常、前々事業年度)の売上高が1,000万円を超える場合に発生します。例えば、設立初年度の売上が1,000万円未満であれば、その翌年度も消費税の支払い義務は免除されますが、基準期間の売上が1,000万円を超えた場合、その翌年から消費税の支払いが必要になります。

消費税率は現在、10%(軽減税率は8%)であり、事業者は売上にかかる消費税から仕入れや経費にかかった消費税を差し引いた額を納税します。

合同会社を運営する際には、適切な節税対策を講じることが重要です。税金の負担を軽減するための様々な方法がありますが、これらは法律に基づいて適切に行わなければなりません。以下では、合同会社における代表的な節税対策を紹介します。

2-1. 経費の適切な計上

合同会社の経費は、法人税の計算において、利益を減らす要因となります。つまり、会社が負担した経費を適切に計上することで、課税所得を減らし、法人税の負担を軽減できます。

経費として計上できるものには、事務所の家賃、光熱費、通信費、備品の購入費、人件費などがあります。特に注意すべきは、会社の事業活動に直接関連する支出であることを証明できるものだけが経費として認められる点です。プライベートな支出を経費として申告することは、税務署に指摘されるリスクがあるため避けましょう。

2-2. 役員報酬の設定

役員報酬も、合同会社の節税対策において重要な要素です。会社の代表者や役員に対して支払われる報酬は、経費として計上できるため、法人税の課税対象となる利益を減らすことが可能です。

ただし、役員報酬の額は税務署に適正とみなされる必要があります。過度に高額な報酬を設定した場合、経費として認められない可能性があるため、適切な金額を設定することが重要です。また、役員報酬は定期的に支払われるものでなければならず、随時変更することは原則として認められません。

2-3. 節税型保険の活用

合同会社が加入できる節税型保険を活用することも、節税対策の一つです。特に、生命保険や損害保険を利用することで、会社の資産を守りながら税金を抑えることが可能です。

節税型の保険は、保険料を会社の経費として計上できるため、税負担を軽減する効果があります。また、会社が保険をかけることで、将来的なリスクに備えることもできます。

2-4. 小規模企業共済の活用

小規模企業共済制度は、法人代表者が個人の退職金を積み立てるための制度です。合同会社の代表者や役員が加入することで、個人の退職金を準備しつつ、掛金を経費として会社の利益から差し引くことが可能です。

この制度は、個人の退職金の準備をしながら、会社の税負担を軽減できるメリットがあり、多くの中小企業で利用されています。

2-5. 簡易課税制度の適用

消費税の納税義務が発生する場合、合同会社は簡易課税制度を利用することで、消費税の計算を簡素化し、税負担を軽減することができます。簡易課税制度では、売上に対して一律の仕入控除率を適用することで、仕入税額控除を簡単に計算できます。

この制度を適用するためには、事前に税務署への届出が必要であり、基準期間の売上高が5,000万円以下であることが条件となります。簡易課税制度を適用することで、事務負担の軽減と節税効果を同時に得ることができます。

合同会社と株式会社の税務面での違いについても知っておくことは重要です。両者は法人である点は同じですが、いくつかの税務面での特徴があります。

3-1. 配当の違い

株式会社では、配当金が株主に分配されますが、この配当金は法人税が課せられた後に支払われるため、株主側でさらに所得税が課される「二重課税」の問題があります。一方、合同会社では配当を行わず、利益は役員報酬や経費として処理されることが多いため、二重課税のリスクが少ないです。

3-2. 株式譲渡や資本の増減

合同会社は株式を発行しないため、資本の増減や株式譲渡に関する手続きが簡素です。これにより、事業拡大や資本の移動がしやすく、税務上の負担も軽減される傾向にあります。

合同会社は、低コストで設立できるだけでなく、税務面でも柔軟に対応できるため、中小企業や起業家にとって魅力的な法人形態です。法人税や消費税、法人住民税といった各種税金について理解を深め、適切な節税対策を講じることで、会社の財務健全性を高めることが可能です。

税金の負担を軽減しつつ、会社の成長を支えるためには、経費の適切な計上や役員報酬の設定、さらに保険制度や共済制度の活用が効果的です。また、合同会社特有の特徴を活かしながら、長期的な視点での税務計画を立てることが重要です。

適切な税務戦略を持つことで、合同会社は安定した事業運営とともに、持続的な成長を実現することができるでしょう。

ぜひ、経営サポートプラスアルファにご相談ください。

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