英会話教室のニーズが過去とは比べ物にならないくらい高まっています。
以前は、「外国の方と話せる」「子どもが小さいころから英語に触れさせる」「豊かな感受性を育むために英語を話す」など、漠然とした、ふわふわした理由で英会話教室に行く、行かせるケースが多かったのですが、今は、受験や進路を決定するうえで英会話能力が重要な指標となっていて、筆記試験と同じくらいの位置づけになっています。
将来を考えると、英会話能力は英語の筆記や数学と同じくらい、それ以上の重要性を持つため、それに気付いている人たちは早速動いています。
英会話教室のニーズは大きく高まっているともいえます。
開業を希望する場合、どのような形の英会話教室が望ましいのでしょうか?
今回は英会話教室開業を目指す方のノウハウについて解説していきます。
ぜひ参考になさってください。
英会話教室開業が今求められている理由
英会話教室は単に個々のスキルアップや自己研鑽のためにある存在ではなく、学習塾のように進路を決めるうえで不可欠なものになっています。
それをここで整理しておきましょう。
大学入試共通テストにおけるリスニング割合の上昇
大学入試センター試験から「大学入試共通テスト」に衣替えしたのが2021年です。
試験の出題傾向も大きく変わりましたが、英語についても、従来の「筆記:リスニング」=「200点:50点」が「100点:100点」に変わりました。
配点については各大学に裁量がありますが、原則、1:1になったことでリスニングの重要性が格段に大きくなりました。
「英語4技能テスト」の浸透と各方面での活用
当初、共通テストの英語は数年以内に民間の「英語4技能テスト」に移行する予定でした。
さまざまなことがあり、それは見送りになりましたが、各私立大学や大学院入試の際には、民間の「英語4技能テスト」を利用するところが増えています。
就職活動の際にも、4技能テストは評価されるため、大学生に対してもニーズがあります。
高校入試におけるスピーキング導入
高校入試でのリスニングテストは当たり前に実施されるようになりましたが、東京都公立高校入試では、2022年度より英語スピーキングも課されるようになります。
英会話教室で中学生の不安要素である「話す」力を伸ばしてあげる必要があり、そのためのニーズが確実に高まっています。
英会話教室開業のためのスキルは?ターゲットは?
英会話教室を開業するにあたり、当然、英会話がナチュラルにできることが条件になります。
しかしそれは主観的なことであり、新しく受講者を募集するにあたって、納得させられる資格や経験が大切になります。
また、受講者をどの層に絞るのかも大切です。
英会話教室開業に求められるスキルは?
入試関係だけでも英会話の需要が大きく高くなりそうだということがわかりました。
それでは英会話教室を開業するにあたってどのようなスキル、資格を持っていると有利なのでしょうか?
単に「英語が話せます」では客観的な証明にならず、英会話を習いたいと思っている人に訴求できません。
英語教諭免許(中学、高校)を持っている人なら、最低限の英語能力は証明できます。
英会話だけではなく、文法やリーディングも織り交ぜて、総合英語の塾として開業することもできそうです。
教員免許以外の資格や検定試験の成績も、英会話教室開業に際して役立つものがあります。
具体的には
- 英語教員免許(最低でも高校1種)
- 英検(実用英語技能検定)準1級以上
- TOEIC800点以上
- TOEFL iBT 61点(TOEFL PBT 500点)
- 国連英検(国際連合公用語・英語検定試験)
- 日商ビジネス英語検定試験
- ビジネス英語翻訳士
- JTA 公認 翻訳専門職資格試験(CPT)
- 通訳案内士(ガイド)試験
この辺りの資格、検定試験結果があれば、真剣に英会話スキルを伸ばしたい人に対して、大きく訴求できます。
英会話教室のターゲットの選定
誰をターゲットにした英会話教室開業をするのか、最初のマーケティングが重要です。
誰でもOKにするとかえって訴求力がなくなります。
大学受験のため英会話教室に通いたい生徒が、カルチャースクールの感覚で英会話を学びたい大人と同じ内容の授業を受けたいとは・・思わないですよね。
ターゲットを明確にすると、英会話教室の内容もおのずと定まってくるはずです。
英会話教室のターゲットとしては主に以下の人たちが考えられます。
ターゲット | 内容 |
---|---|
小学生以下 | 英語へのファーストコンタクトです。 キッズ英会話であり、英語力だけでなく、保育や教育の素養も求められます。 |
中高生向け受験英語 | 大学入試向けリスニング対策や英語4技能テスト、東京都で導入されるスピーキングなど、入試に直結した内容を扱います。 |
留学希望者向け英会話 | 留学に必要な民間英語試験のスコア突破に特化します。 日常生活、および専門分野を英語で学び、討論できるスキルを養成します。 |
大学生向け就活英語 | 就職活動の際に有利になるよう、TOEICやTOEFLの点数を伸ばせるような検定試験対策を行います。 |
資格試験特化 | 高校生~社会人を対象にTOEICやTOEFL、英検などの英語資格試験に特化した実務的な英会話教室です。 |
社会人向け英会話 | 海外赴任や海外出張の際に役立つ英会話スキルを養成します。 ビジネス英語も積極的に取り入れていきます。 |
学び直し | 大人、シニア層向けに英会話の初歩から行い、楽しさを知って学び直しを行います。 特定の試験合格等を目指しません。 |
「英会話教室」と一言で言ってもこれだけのバリエーションがあります。
ご自身の得意不得意や経験、持っている英語資格などを考慮して、より集客でき、他の英会話教室と差別化できる内容にすることが望ましいです。
英会話教室の開業方法
英会話「教室」ですが、必ずしも学習塾のようにどこかのテナントを借りて「教室」を作る必要はありません。
ターゲット、予想される受講者数、開業場所などを考えてください。
ひょっとすると、開業費用は大幅に抑えられるかもしれません。
開業場所の決定
英会話教室開業は学習塾の開業と似ていますが、「会話」の練習をしますので受講者の声が響いても大丈夫な場所の確保が大切です。
場合によっては、CDや海外放送の番組を教室で流すこともあるでしょう。
開業方法は大きく分けて
- 自宅の一室(自宅開業)
- マンションなどを借りる
- 事務所を借りる
- 教室を設けない(家庭教師、オンライン)
この4つの方法があります。
外部に英会話教室の場所を借りる場合、当然賃借料がかかります。
防音可能なことが大切であり、通常の事務所物件よりも対象が限られる可能性があります。
マンションなど居住用物件を借りる場合、事業用でも使えるのか確認をしてください。
人の出入りが多く、隣室の住人などから管理会社や大家さんにクレームが行く可能性があります。
社会人向け英会話教室に特化するならば、通勤帰りにも寄りやすい駅近く、近所の小中学生対象であれば自宅開業や大家さんに了解を取ってマンション開業など、英会話教室の場所やスタイルが変わります。
最近はオンライン英会話教室も増えつつあります。
オンラインであれば、自宅開業が容易であり、賃貸料や什器代などがかからず、固定費を抑えながら開業ができます。
どのスタイルで開業するのか、ぜひ考えてみてください。
代表的な開業スタイルを表にしました。
開業スタイル | |
---|---|
個人開業、個人教室 | 一般的なイメージの英会話教室。 自分1人で開業でき、自分で考えた内容を教えます。 利益もすべて自分のものになります。 自宅開業、教室を借りる、マンション開業などさまざまな開業方法があります。 |
英会話フランチャイズチェーンへ加盟し開業 | 「英会話の〇〇」のように、フランチャイズに加盟し、その大手英会話チェーンの名前で英会話教室を開きます。 集客力もそのチェーンの知名度で容易です。 教材もフランチャイズのものを使いますが、教える内容はそれに縛られます。 もちろん、加盟料や月々のフランチャイズ料を支払わなければなりません。 |
家庭教師 | 1対1での家庭教師スタイルです。 ホームティーチャーやホームインストラクターと呼ばれることもあります。 自分で教室を用意する必要がないので固定費がかかりませんが、契約が切れると収入が一気になくなってしまいます。 |
オンライン | 1対1だけでなく複数でも可能なのが強みです。 自分自身の通信環境に加えて、受講生の通信環境やPC設備なども必要であり、敷居は意外と高いと言えます。 |
英会話教室で教える内容、ターゲットに加えて、教え方、スタイルも多様です。
英会話教室開業は会社設立すべきか個人事業主でもよいのか?
英会話教室を開業する際、会社を設立して事業を始める方法と個人事業主で開業する方法の2つがあります。
まずは個人事業主として様子を見てから、売上の推移を予想して将来的に会社を設立(法人化)するやり方で構いません。
フランチャイズチェーンに加盟する場合、会社設立か個人事業主かの指示があるかもしれませんのでその場合はそれに従ってください。
会社設立と個人事業主の開業、それぞれのメリットとデメリットをまとめてみました。
会社設立 |
個人事業主 |
メリット |
|
社会的信用がある(取引先、金融機関から見て) |
簡単に開業できる |
経費の範囲が広い |
定款などの作成義務がない |
責任の範囲が有限 |
自由な働き方ができる |
赤字繰り越しが10年である |
廃業手続きもすぐにできる |
利益次第で個人事業主よりも税率が下がる可能性 |
社会保険に加入できないため、国民健康保険と国民年金では老後が不安 |
最高税率が23.2%と所得税の約半分 |
|
デメリット |
|
設立までの手間がかかる |
社会的信用がない |
設立後の帳票作成や税務申告が大変 |
最大税率45%と法人税よりはるかに高い |
赤字でも法人住民税(均等割)がかかる |
無限責任で経営失敗のマイナスはすべて自分が負う |
社会保険へ加入しなければならない |
赤字繰り越しが3年までしかできない |
会社の廃業手続きが煩雑 |
経費で落とせる範囲が狭い |
会社を設立することで金融機関などからの社会的信用度が増しますが、受講者は会社であるかどうかはあまり気にしない可能性があります。
それよりも先生として能力があり、しっかりした資格を持っているかが重要になります。
将来的に経営をメインにし、先生を雇用する場合は会社にした方がいいかもしれません。
税金面でも会社設立と個人事業主で差が出ます。
下記の表をご覧ください。
事業主体 | 会社設立 | 個人事業主 |
---|---|---|
所得税 | 代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その5%~45% | 事業の売上から「事業所得」を算出してその5%~45% |
個人住民税 | 代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その約10% | 事業の売上から「事業所得」を算出してその約10% |
消費税 | 課税売上1000万円以上の場合支払う(2年間は支払い義務がない特例もあり) | 課税売上1000万円以上の場合支払う |
法人税 | かかる(15%~23.2%) | なし |
法人住民税 | かかる | なし |
法人事業税 | かかる | なし |
個人事業税 | なし | かかる |
会社を設立した場合は「法人税」、個人事業主の場合は「所得税」を支払います。
細かい計算はここでは説明しませんが、売上が少ないうちは、個人事業主の方が税金は安く、売上が上がると(おおよそ年間1000万円超)、会社を設立していた方が安くなります。
いきなり、年間数千万円を売り上げる英会話教室は不可能だと思われますので、税金対策から言うと、個人事業主として開業した方がいいケースが多いです。
ただ、絶対に個人事業主がいいと言えない面もあり、売上目標や事業計画なども勘案して決めます。
個人事業主として開業し、途中で法人化、法人成り(会社設立)することも可能です。
逆に会社を設立してから個人事業主に戻るのは、費用面(廃業費用がかかる)や手続きで大変です。
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英会話教室開業資金は必要か?
英会話教室で開業する場合の開業資金ですが、自宅開業の場合以外は一定額がかかります。
会社を設立すると、さらに法定費用が上乗せされるので注意してください。
外部にスクールスペースを借りる場合と、マンション開業の場合では費用が異なります。
マンションタイプの場合も、事業用で契約すると消費税が課税されます。
英会話教室の独立開業費、資金内訳 | 開業金額 |
---|---|
物件取得(敷金礼金仲介料) | 200万円(外部事務所形式)、100万円(マンション形式)事務所賃貸、前家賃、資金、礼金 |
内装工事 | 50万円~100万円(マンションは内装工事不可) |
什器備品(机、ホワイトボードなど) | 30万円~50万円 |
パソコン、ネット回線 | 10万円 |
運転資金(当面の生活費) | 50万円~70万円 |
会社設立費用(法定費用) | 6万円~20万円 |
合計 | 400万円~500万円前後(1人会社の場合) |
マンション開業の場合、部屋の改装は基本的に不可能です。
外部物件の場合は、居抜きで学習塾などがあった物件を借りる時以外は、逆に改装が不可欠になり費用がかさみます。
フランチャイズチェーンで開業する場合、フランチャイズ元から開業資金の借入、補助ができることもありますが、延々と返済し続けるような契約になっているケースもあり、おすすめできません。
高利の借入をせずに、適切な資金調達のため何ができるかは、開業に携わっている税理士など専門家に尋ねると、適切なアドバイスを受けられます。
税理士法人「経営サポートプラスアルファ」では開業だけではなく、開業時の資金調達についてもコンサルティングをいたしますのでぜひご活用ください。
英会話教室開業は今後の有望分野!「経営サポートプラスアルファ」に相談を
英会話のスキルや得点が今後、人生のさまざまな場面で評価されることになりそうです。
そのため、身近なスキルアップの場所として、英会話教室のニーズが高まることが予想されます。
英会話教室開業の際には、ある程度まとまった開業資金が必要になるケースもあるため、開業と資金調達に詳しい専門家のアドバイスを受けていただくとよいでしょう。
「経営サポートプラスアルファ」では、このような開業に必要なサポートを提供します。
開業や開業後の税務、法人成りなどについてもなんでもご相談ください。
「経営サポートプラスアルファ」は土日祝日夜間も対応します。
また、遠隔地にお住まいの方は、LINEやZOOM、チャットワークなどでも対応しますので大丈夫です。
今後有望な英会話教室のニーズを汲み取って、ぜひ開業を成功させましょう。